拳固《げんこ》で、寝台のフチをたたいてみました。それから枕もとの時計を手にとりました。暁方《あけがた》の三時でした。――一体、私の妻は、こんな暁方の三時なんて云う時間にこんな田舎道に出かけていって何をしようと云うのでしょう?
私は廿分間《にじっぷんかん》ばかり、あれやこれやと考えてみて、何か心に思い当ることを見つけようと思って、じっと坐《すわ》っておりました。そしてそれからまだしばらく、一生懸命考えてみましたが、しかし何も思い当ることはありませんでした。――私は全く途方に暮れていました。と、ちょうどその時、ふと私は再び入口の戸が静かに閉められて、階段を上《あが》って来る彼女の足音を耳にしたんです。
「エフィ、一体、まあお前はどこへいって来たんだい?」
私は彼女が部屋に這入って来ると訊ねました。
と、彼女はビックリして、何か微かな叫び声のようなものをあげました。その叫び声と驚き方とは、いよいよ私の心の疑いを深めました。なぜならそれらは、そこに何か曰《いわ》くがありそうに思えたからです。――元来私の妻は不断から隠しごとの出来ない明けっ放しな性質の女なんです。それなのにその時に限って彼
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