っていることが、だんだんはっきり分って来ました。私はこの時ならぬ時間に妻が外へ出て行くような恰好をしているので驚いて、――と云うより何か叱言《こごと》を云おうとしたのですが、私の口からは何か寝言めいた言葉が出てしまいました。がその次の瞬間、目を細くあけて、蝋燭《ろうそく》の光りで照らされている彼女の顔を見た時、私はハッとして咽喉《のど》がつまってしまいました。私は彼女のそんな顔つきを未《いま》だかつて見たことはありませんでした。――それはどう見ても彼女だとは思えないような顔つきでした。――まるで死人のような真蒼《まっさお》な顔色をして、呼吸《いき》をはずませて、私の目をさまさせはしないだろうかと、マントを着てしまうと、コッソリと私の寝台のはしをうかがうのでした。がやがて、私がグッスリ寝込んでいるものと思いこんで、ソッと音のしないように部屋から滑り出していってしまいました。それからちょっとたってから、鋭い何かが軋《きし》むような音を耳にしました。それは玄関の戸の蝶番《ちょうつがい》の音らしいものでした。――私は寝台の上に起き上がって、自分が本当に目を覚ましているのかどうかを確かめるため、
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