まだ五分間ばかりそこにじっと立っていました。そしてその顔から受けた印象についていろいろ考えてみました。――私はそれが男だったか女だったか、どうしてもはっきりしないんです。けれどもその色だけははっきり覚えています。それは死人の顔のような、青ざめた黄色でした。そしてその中《うち》に何か人をゾッとさせるようなものを含んでいるのです。私は不思議さのあまりとうとう、その離れ家の新しい住み手がどんな人間か見とどけてやろうと決心しました。そこで私は近づいて行ってノックしますと、すぐ入口の戸は開けられて背の高い痩せこけた不愛憎《ぶあいそう》ないやらしい顔をした女が現れました。
「何か御用ですか」
 と、その女は、北方《ほくぼう》なまりまるだしできいた。
「私は原の向う側に、あなたとお隣同志にに住んでいるものでございますが」
 と、私は自分の家《うち》のほうを指さしながらそう云った。
「ちょうどお越しになっていらしったのを見ましたもので、何かお手伝いでもするようなことがあったらと思いましたもので……」
「いえ、お願いしたい時はこちらから上がります」
 そう云うと彼女は、ピシャッと私の目の前で戸を閉めてし
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