そしてその離れ家の入口の側《そば》にある芝生の上には、カーペットとかその他そんなものがおいてありました。――たしかに誰かがその離れ家に引越して来たんです。私はそれの前を通りすぎて立ち止りました。そしてよくブラブラしている人がやるように、その離れ家をボンヤリ眺めながら、私たちのすぐ近くへ来て住む人たちは、どんな種類の人なんだろうと想像してみました。と、私は、ふと、その家《うち》の二階の窓から、私をじっと見詰めている人の顔のあるのに気がつきました。
 私はその顔を見た瞬間、どう云うわけか知りませんけれど、ゾッとしましたよ、ホームズさん。――私はその家《うち》からかなり離れていたので、その顔をはっきり見定めることは出来ませんでしたけれど、何かこう気持ちの悪い惨忍そうな所がありました、それが私の受けた印象でした。――私は、私を見詰めているその顔をもっと近くでよく見てやろうと思って、いそいで近寄っていったんです。すると急にその顔は引込んじまいました。まるで不意に部屋の暗《やみ》の中に※[#「てへん+毟」、第4水準2−78−12]《も》ぎ取られたように、急に見えなくなってしまったんです。けれど私は
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