かりで、――まだ本当に若かったんですけれど。その頃、彼女はヘブロン夫人と云っていました。彼女は若い時、アメリカへいってアトランタの町に住んでいたのですが、そこで当時相当にやっていた弁護士のヘブロンと結婚したんです。彼等は子供が一人ありました。しかし黄疸《おうだん》がはやって、子供も夫もそれで死んでしまいました。私は彼女の夫の死亡証明書を見たことがあります。――そんなわけで彼女はアメリカがすっかり嫌になって、バイナーにいる独り者の叔母の所へ帰って来たんです。――彼女の夫は彼女に生活して行けるだけのものは残していってくれました。ですから彼女は年七分の利に廻る四千五百|磅《ポンド》の株券を持っていました。――私が彼女に会ったのは、彼女がバイナーに来てようやく六ヶ月たったばかりの頃でした。そうして私たちはお互に恋し合い、数週間後に結婚したんです。――ところで私自身はホップの卸商《おろししょう》です。私は年に七八百|磅《ポンド》の収入がありますから、私たちは別に不自由はしておりません。それに私はノーブリーに年に八|磅《ポンド》あがるちょっとした別荘を持っております。――私たちの住んでいる所は都会
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