った。
「では早速証拠を持ち寄り合って、時を移さずこの邸内の調査を始めようではないですか、――」
検察官のマーティンは私の友人に大変好意を持っていて、私の友人を自由に活動させて、ただその結果を注意深く見ているだけであった。白髪の老田舎外科医が、ヒルトン・キューピット夫人の診察に来ていたが、その話に因れば、彼の女の傷は重傷ではあったが、しかし命には差支えがなかろうと云うことであった。弾丸《たま》は彼の女の前額を貫通していたが、たぶん彼の女はしばらくの間は、意識を失ったに相違なかった。彼の女が撃たれたのであるのか、それとも自分から自分を撃ったのであるかと云うことについては、彼の女は決して口を開かなかった。そしてそれは疑もなく、ごく近距離から発射されたものに相違なかった。室の中に一|挺《ちょう》のピストルっきり見出されなかったが、しかし薬莢《やくきょう》は、二つ空になっていた。ヒルトン・キューピット氏は、心臓を打ちぬかれていた。そのただ一挺のピストルは、二人のちょうど中間の床の上に落ちてあったが、したがってこれは、ヒルトン・キューピットがその妻を撃ってから、自分自身を撃ったのか、それとも妻
前へ
次へ
全58ページ中27ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング