台にゆくことですがね」
ホームズの顔はすっかり不安に蔽《おお》われてしまった。
「我々は、リドリング村に行く途中ですが、しかし実は、全くどんなことが起ったのか、きいてはいないのです」
彼は云った。
「それはなかなか大変なことですな」
駅長は云った。
「ヒルトン・キューピット夫妻は、どちらも撃たれたのだそうです。召使の者の云うには、まず夫人が檀那《だんな》さんを撃って、それから自分も撃ったのだそうですがね。それで檀那さんの方はもう事切れてしまい、夫人の方は虫の息ですって、――どうも全く、あたら名門の末を本当に、――」
ホームズは一語も発せず、馬車に大急ぎで乗り、それから七|哩《まいる》以上の道のりを、全く黙し切ったままであった。私は実際この時ほど、ホームズが落胆している様子を、そうたびたび見たことはない。彼は町から以来と云うものは、全く不安に塞《とざ》されたままで、ただ凝《じっ》と朝刊に、不安な目を向けているだけであった。そして結局、最も悪い結果の予想が、俄然はっきりしてしまってからは、彼はもう救うべからざる憂欝に陥ってしまったのであった。彼は坐席に凭《もた》れて、沈思のために全
前へ
次へ
全58ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
ドイル アーサー・コナン の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング