を越して向うが見えなくなった。が、その煙がすっかりぬぐわれると、そこは恐ろしい修羅の巷《ちまた》と化していた。ウィルソンとその他の八人のものも、床の上をのた打っていた。そして血とテーブルの上にひっくりかえったシェリー酒との流れは、今でも私はその時の光景を考えると気持ちが悪くなるような様子で流れていた。
私たちは、それがもしプレンダーガストのためでなかったら、たぶん、もうその仕事をほうり出していたに違いないと思うほど、その光景を見ておどかされてしまった。しかしプレンダーガストは牛のように咆《ほ》えると、生き残ったものを従えて、戸口のほうに突進した。そして外に出ると、船尾のほうに中尉とそして十人のその部下がいた。彼等は私たちに発砲しようとしていたが、私たちはその前に彼等に跳《おど》りかかった。無論彼等もそれに抵抗したが、しかし私たちのほうが優勢であった。そうしてすべては五分間で終ってしまった。――おお、神よ、その船の如き人殺しの家が、未だかつてこの世にあったであろうか? プレンダーガストはまるで怒れる悪魔のようであった。彼は兵士たちをあたかも子供のようにつまみ上げると、生きていようと死んで
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