、私は悲惨な冒険に慣れたために死人に対する恐怖がほとんどすっかりなくなっていたので、糠《ぬか》の嚢か何かのように彼の腰を掴んで、ぐっと一度持ち上げると、船の外へ投げ落した。彼はどぶんと音を立てて水の中へ沈んで行った。赤い帽子は取れて、水面に浮んだ。そしてはねかった水が静まると、彼とイズレールとが並んで横っているのが見えて、二人とも水が揺れるにつれてゆらゆらしていた。オブライエンは、まだごく若い男なのに、頭がひどく禿げていた。その禿頭を、彼は自分を殺した人間の膝にのっけて横っていた。そして敏捷に動く魚がその二人の上をあちこちと泳いでいた。
私は今では船にただ一人となった。潮はつい今変ったばかりであった。太陽はやがて沈もうとしていて、すでに西岸の松の樹の影がちょうど碇泊所のあたりに射《さ》しかけて、甲板の上に模様をなして落ちていた。夕風が吹き起っていて、それは東にある峯の二つある山のためによほど受け止められてはいたけれども、それでも索具は静かに少し歌うように鳴り出していたし、垂れていた、帆はあちこちとばたばたし出していた。
私は船が危険になったのがわかりかけた。で、斜檣帆《ジブ》を急い
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