り、ただ上衣とシャツとを檣に打ちつけられているだけとなった。
この上衣とシャツとは急に体をぐいと動かして切り取り、それから右舷の横静索を伝って再び甲板に戻った。私は心弱くなっていたので、イズレールがついさっきそこから落ちた、水の上へ差し懸っている左舷の横静索を、再び伝って降りる気にはどうしてもなれなかったのだ。
私は船室へ下りて行って、自分の傷に出来るだけのことをした。その傷はずいぶん痛んだし、まだどんどん出血していた。しかし深い傷でもなければ危険な傷でもなく、また腕を動かしてもひどく苦痛だということもなかった。それから私はあたりを見※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]し、船が今では或る意味で自分のものだったから、その船の最後の乗客をも船から掃い出してやろうと思い立った。――例の死人のオブライエンである。
彼は、前に言ったように舷牆に突き当って、そこで、気味の悪い不恰好《ぶかっこう》な人形のようにころがっていた。なるほど人間の大きさはしているが、人間らしい色や人間らしい綺麗さとは何と違っていることだろう! その場所にいてくれたので、私は容易に彼を始末することが出来た。それに
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