の草で拭いていた。その他のものは何の変化もなく、太陽は、湯気立っている沼や、山の高い尖頂に、依然として無慈悲に輝いていて、私は、自分の眼の前で殺人が実際に行われて、一人の人間の生命がつい一瞬前に無残に絶たれたのだということを、ほとんど信ずる気にはなれないのであった。
しかしその時ジョンは手をポケットの中に入れて、呼子を取り出し、いろいろの調子の音《ね》で吹くと、それが暑い空気の中を遠くまで響きわたった。私には、無論、その合図の意味はわからなかった。が、それを聞くとたちまちに私の恐怖が目覚めて来た。もっとたくさん人がやって来るのだろう。私は発見されるかも知れない。彼等はすでに実直な人々を二人まで殺しているのだ。トムとアランとの後に、私が次にやられるのではなかろうか?
すぐさま私は逃げ出すことにして、出来るだけ速くこっそりと、森のもっと開けた部分へと、再び這い戻りかけた。そうしていると、あの老海賊とその仲間たちとの間に互に呼び交している声が聞え、危険を知らせるその声が私の足を早めさせた。茂みを出るや否や、私は、人殺しどもから離れられさえすれば逃げる方向などにはほとんど構わずに、それまで
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