》つた、あゝ、其《それ》は五位鷺《ごゐさぎ》です。中島《なかじま》の上《うへ》へ舞上《まひあが》つた、と見《み》ると輪《わ》を掛《か》けて颯《さつ》と落《おと》した。
(ひい。)と引《ひ》く婦《をんな》の聲《こゑ》。鷺《さぎ》は舞上《まひあが》りました。翼《つばさ》の風《かぜ》に、卯《う》の花《はな》のさら/\と亂《みだ》るゝのが、婦《をんな》が手足《てあし》を畝《うね》らして、身《み》を※[#「足へん+宛」、第3水準1−92−36]《もが》くに宛然《さながら》である。
 今《いま》考《かんが》へると、それが矢張《やつぱ》り、あの先刻《さつき》の樹《き》だつたかも知《し》れません。同《おな》じ薫《かをり》が風《かぜ》のやうに吹亂《ふきみだ》れた花《はな》の中《なか》へ、雪《ゆき》の姿《すがた》が素直《まつすぐ》に立《た》つた。が、滑《なめら》かな胸《むね》の衝《つ》と張《は》る乳《ちゝ》の下《した》に、星《ほし》の血《ち》なるが如《ごと》き一雫《ひとしづく》の鮮紅《からくれなゐ》。絲《いと》を亂《みだ》して、卯《う》の花《はな》が眞赤《まつか》に散《ち》る、と其《そ》の淡紅《うすべに》
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