し》の其《そ》の柳《やなぎ》の根《ね》に薄墨色《うすずみいろ》に立《た》つて居《ゐ》る……或《あるひ》は又《また》……此處《こゝ》の土袋《どぶつ》と同一《おなじ》やうな男《をとこ》が、其處《そこ》へも出《で》て來《き》て、白身《はくしん》の婦人《をんな》を見《み》て居《ゐ》るのかも知《し》れません。
私《わたし》も其《そ》の一人《ひとり》でせうね……
(や、待《ま》てい。)
青膨《あをぶく》れが、痰《たん》の搦《から》んだ、ぶやけた聲《こゑ》して、早《は》や行掛《ゆきかゝ》つた私《わたし》を留《と》めた……
(見《み》て貰《もれ》えたいものがあるで、最《も》う直《ぢき》ぢやぞ。)と、首《くび》をぐたりと遣《や》りながら、横柄《わうへい》に言《い》ふ。……何《なん》と、其《そ》の兩足《りやうあし》から、下腹《したばら》へ掛《か》けて、棕櫚《しゆろ》の毛《け》の蚤《のみ》が、うよ/\ぞろ/\……赤蟻《あかあり》の列《れつ》を造《つく》つてる……私《わたし》は立窘《たちすく》みました。
ひら/\、と夕空《ゆふぞら》の雲《くも》を泳《およ》ぐやうに柳《やなぎ》の根《ね》から舞上《まひあが
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