《かは》りはない。
唯《たゞ》山深《やまふか》く木《き》を樵《こ》る賤《しづ》が、兎《と》もすれば、我《わ》が伐木《ばつぼく》の谺《こだま》にあらぬ、怪《あや》しく、床《ゆか》しく且《か》つ幽《かすか》に、ころりん、から/\、と妙《たへ》なる楽器《がくき》を奏《かな》づるが如《ごと》きを聞《き》く――其時《そのとき》は、森《もり》の枝《えだ》が、一《ひと》つ一《ひと》つ黄金《こがね》白銀《しろがね》の線《いと》に成《な》つて、其《そ》の音《ね》を伝《つた》ふるが如《ごと》くに感《かん》ずる……思《おも》ふに魔神《まじん》が対向《むかひあ》つて、采《さい》を投《な》げる響《ひゞき》であらう……何《なん》につけても、飛騨谷《ひだだに》第一《だいいち》の隠《かく》れ場所《ばしよ》、近《ちか》づき難《がた》い魔所《ましよ》である、と猶《な》ほ亭主《ていしゆ》が語《かた》つたのである。
二人《ふたり》は、聞《き》くが如《ごと》き他界《たかい》であるのを信《しん》ずると共《とも》に、双六《すごろく》の賭《かけ》が弥《いや》が上《うへ》にも、意味《いみ》の深《ふか》いものに成《な》つた事《こと》
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