ないしや》を連《つ》れて踏込《ふみこ》むやうな遊山場《ゆさんば》ならず。双六盤《すごろくばん》の事《こと》は疑無《うたがひな》けれど、其《そ》の是《これ》あるは、月《つき》の中《なか》に玉兎《ぎよくと》のある、と同《おんな》じ事《こと》、と亭主《ていしゆ》は語《かた》つた。
土地《とち》のものが、其方《そなた》の空《そら》ぞと視《なが》め遣《や》る、谷《たに》の上《うへ》には、白雲《はくうん》行交《ゆきか》ひ、紫緑《むらさきみどり》の日影《ひかげ》が添《そ》ひ、月明《つきあかり》には、黄《き》なる、又《また》桃色《もゝいろ》なる、霧《きり》の騰《のぼ》るを時々《ときどき》望《のぞ》む。珠《たま》か、黄金《こがね》か、世《よ》にも貴《たうと》い宝什《たから》が潜《ひそ》んで、気《き》の群立《むらだ》つよ、と憧憬《あこが》れながら、風《かぜ》に木《き》の葉《は》の音信《たより》もなければ、もみぢを分入《わけい》る道《みち》も知《し》らず……恰《あたか》も燦爛《さんらん》として五彩《ごさい》に煌《きら》めく、天上《てんじやう》の星《ほし》を指《ゆびさ》しても、手《て》に取《と》られぬ、と異
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