うに腸《はらわた》も長《なが》く、青《あを》い火《ひ》が其《それ》に搦《から》んだので、余《あまり》の事《こと》に気絶《きぜつ》したんだ、と後《のち》に言《い》ひます。
 父《ちゝ》は年《とし》経《た》つて亡《な》くなるまで、其時《そのとき》の事《こと》に就《つ》いては一言《いちごん》も何《なん》にも言《い》はない。最《もつと》も当坐《たうざ》二月《ふたつき》ばかりは、何《ど》うかすると一室《ひとま》に籠《こも》つて、誰《たれ》にも口《くち》を利《き》かないで、考事《かんがへごと》をして居《ゐ》たさうですが、別《べつ》に仔細《しさい》は無《な》かつたんです。
 但《たゞし》其時《そのとき》から、両親《りやうしん》は私《わたくし》を男《をとこ》にしました。其《それ》まで、三人《さんにん》も出来《でき》た児《こ》が皆《みんな》育《そだ》たなかつたので、私《わたくし》を女《をんな》にして置《お》いたんです。名《な》も雪枝《ゆきえ》と言《い》ふ女《をんな》のやうな。
 其《そ》の名《な》を直《す》ぐに号《がう》にして、今《いま》、こんな家業《かげふ》を為《す》るやうに成《な》つたのも、小児《こ
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