ざう》に刻《きざ》んだのが、膝《ひざ》柔《やはら》かにすつと坐《すは》る。
袖《そで》は両方《りやうはう》から振《ふり》が合《あ》つて、乳《ちゝ》のあたりで、上下《うへした》に両手《りやうて》を重《かさ》ねたのが、ふつくりして、中《なか》に何《なに》か入《はい》つて居《ゐ》さうで、……駆《か》けて行《い》つて、
『姉《ねえ》さん、』と捉《つか》まつた時《とき》なぞ、肩《かた》が揺《ゆ》れると、ころりん、ころりんと其《それ》は実《じつ》に……何《なん》とも微妙《びめう》な音《ね》が為《し》て幽《かすか》に鳴《な》る、……父母《ふたおや》をはじめ、見《み》るほどのものは、何《なん》だらう何《なん》だらう、と言《い》ひ/\したが、指《ゆび》を折《を》らなくては分《わか》らないから、無論《むろん》開《あ》けては見《み》ず仕舞《じまひ》。
とう/\其《そ》の彫像《てうざう》を――何《なん》です――父《ちゝ》が暖炉《ストーブ》に燻《く》べて焼《や》いたまでも分《わか》らなかつたんです。
ちら/\雪《ゆき》の降《ふ》る晩方《ばんがた》でした。……私《わたくし》は、小児《こども》の群食《むらぐひ
前へ
次へ
全284ページ中52ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング