》、はて、お前様《めえさま》、何《なに》言《い》はつしやる。何《ど》うさつしやる……気《き》を静《しづ》めてくらつせえよ。」
「否《いゝえ》、何《ど》うぞ、失礼《しつれい》ながらお名告《なの》り下《くだ》さい。御覧《ごらん》の通《とほ》り、私《わたくし》は何《ど》うかして居《ゐ》る。……夢《ゆめ》なんだか、現《うつゝ》なんだか、自分《じぶん》だか他人《たにん》だか、宛然《まるで》弁別《わきまへ》が無《な》いほどです――前刻《さつき》からお話《はな》し被為《なす》つた事《こと》も、其方《そちら》では唯《たゞ》あはあは笑《わら》つて居《ゐ》らつしやるのが、種々《いろ/\》な言《ことば》に成《な》つて、私《わたくし》の耳《みゝ》に聞《き》こえるのかも分《わか》りません。が、其《それ》に為《し》てもお聞《き》かせ下《くだ》さい。お名《な》が此《こ》の耳《みゝ》へ入《はい》れば、私《わたくし》は私《わたくし》だけで、承《うけたまは》つたことゝ了見《れうけん》します。香村雪枝《かむらゆきえ》つて言《い》ふんです。先生《せんせい》、真個《まつたく》は靱負《ゆきへ》と言《い》つて、昔《むかし》の侍《さ
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