さま》、祖父殿《おんぢいどん》は家《うち》へ帰《かへ》りごと有《あ》るめえがね。
お剰《まけ》に家中《うちぢう》、無事《ぶじ》なものは一人《ひとり》も無《な》かつた。が不思議《ふしぎ》に私《わし》だけが助《たすか》りました。
御時世《ごじせい》が変《かは》つてから、古葛籠《ふるつゞら》の底《そこ》で見《み》つけました。祖父殿《おんぢいどん》が工夫《くふう》の絵図面《ゑづめん》、暇《ひま》にあかして遣《や》つて見《み》て、私《わし》が先《ま》づ乗《の》つて出《で》たが、案《あん》の定《ぢやう》燃出《もえだ》したで、やれ、人殺《ひとごろ》し、と……はツはツはツ、水《みづ》へ入《はい》つて泳《およ》いで遁《に》げた。
困《こま》つた事《こと》には、私《わし》が腹《はら》からの工夫《くふう》でねえでの、焼《や》くまいやうに手《て》を抜《ぬ》くと、五位鷺《ごゐさぎ》が動《うご》かぬ。濠《ほり》の真中《まんなか》で燃《も》え出《だ》すを合点《がつてん》の向《むき》には、幾度《いくど》も拵《こさ》へて乗《の》せて進《しん》ぜる。其処《そこ》で、へい、麓《ふもと》のものは承知《しようち》して、私
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