》ぢや、やい!)
 右左《みぎひだり》にして綱《つな》を引張《ひつぱ》つたが、脚《あし》から根《ね》をつけた如《ごと》くにぬつくと立《た》つて居《ゐ》てびくともせぬ。
 親仁《おやぢ》大《おほい》に苛立《いらだ》つて、叩《たゝ》いたり、打《ぶ》つたり、馬《うま》の胴体《どうたい》について二三|度《ど》ぐる/\と廻《ま》はつたが少《すこ》しも歩《ある》かぬ。肩《かた》でぶツつかるやうにして横腹《よこばら》に体《たい》をあてた時《とき》、漸《やうや》う前足《まへあし》を上《あ》げたばかり又《また》四|脚《あし》を突張《つツぱ》り抜《ぬ》く。
(嬢様《ぢやうさま》々々《/\》。)
と親仁《おやぢ》が喚《わめ》くと、婦人《をんな》は一寸《ちよいと》立《た》つて白《しろ》い爪《つま》さきをちよろちよろと真黒《まツくろ》に煤《すゝ》けた太《ふと》い柱《はしら》を楯《たて》に取《と》つて、馬《うま》の目《め》の届《とゞ》かぬほどに小隠《こがく》れた。
 其内《そのうち》腰《こし》に挟《はさ》んだ、煮染《にし》めたやうな、なへ/\の手拭《てぬぐひ》を抜《ぬ》いて克明《こくめい》に刻《きざ》んだ額《ひた
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