ち》を越《こ》えて行《ゆ》きやす。)
(もし其《それ》へ乗《の》つて今《いま》からお遁《に》げ遊《あそ》ばすお意《つもり》ではないかい。)
 婦人《をんな》は慌《あはた》だしく遮《さへぎ》つて声《こゑ》を懸《か》けた。
(いえ、勿体《もツたい》ない、修行《しゆぎやう》の身《み》が馬《うま》で足休《あしやす》めをしませうなぞとは存《ぞん》じませぬ。)
(何《なん》でも人間《にんげん》を乗《の》つけられさうな馬《うま》ぢやあござらぬ。御坊様《おばうさま》は命拾《いのちびろひ》をなされたのぢやで、大人《おとな》しうして嬢様《ぢやうさま》の袖《そで》の中《なか》で、今夜《こんや》は助《たす》けて貰《もら》はつしやい。然様《さやう》ならちよつくら行《い》つて参《まゐ》りますよ。)
(あい。)
(畜生《ちくしやう》、)といつたが馬《うま》は出《で》ないわ。びく/\と蠢《うごめ》いて見《み》える大《おほき》な鼻面《はなツつら》を此方《こちら》へ捻《ね》ぢ向《む》けて頻《しきり》に私等《わしら》が居《ゐ》る方《はう》を見《み》る様子《やうす》。
(どう/\どう、畜生《ちくしやう》これあだけた獣《けもの
前へ 次へ
全147ページ中90ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング