済《す》みません。)
(あれ、嬢様《ぢやうさま》ですつて、)と稍《やゝ》調子《てうし》を高《たか》めて、艶麗《あでやか》に笑《わら》つた。
(唯《はい》、唯今《たゞいま》あの爺様《ぢいさん》が、然《さ》やう申《まを》しましたやうに存《ぞん》じますが、夫人《おくさま》でございますか。)
(何《なん》にしても貴僧《あなた》には叔母《をば》さん位《ぐらゐ》な年紀《とし》ですよ。まあ、お早《はや》くいらつしやい、草履《ざうり》も可《よ》うござんすけれど、刺《とげ》がさゝりますと不可《いけ》ません、それにじく/\湿《ぬ》れて居《ゐ》てお気味《きみ》が悪《わる》うございませうから)と向《むか》ふ向《むき》でいひながら衣服《きもの》の片褄《かたつま》をぐいとあげた。真白《まつしろ》なのが暗《くら》まぎれ、歩行《ある》くと霜《しも》が消《き》えて行《ゆ》くやうな。
ずん/\ずん/\と道《みち》を下《お》りる、傍《かたはら》の叢《くさむら》から、のさ/\と出《で》たのは蟇《ひき》で。
(あれ、気味《きみ》が悪《わる》いよ。)といふと婦人《をんな》は背後《うしろ》へ高々《たか/″\》と踵《かがと》を上《
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