のございます処《ところ》までは未《ま》だ何《ど》の位《くらゐ》ございませう。)」

         第十一

「(貴方《あなた》まだ八|里《り》余《あまり》でございますよ。)
(其他《そのほか》に別《べつ》に泊《と》めてくれます家《うち》もないのでせうか。)
(其《それ》はございません。)といひながら目《め》たゝきもしないで清《すゞ》しい目《め》で私《わし》の顔《かほ》をつく/″\見《み》て居《ゐ》た。
(いえもう何《なん》でございます、実《じつ》は此先《このさき》一|町《ちやう》行《ゆ》け、然《さ》うすれば上段《じやうだん》の室《へや》に寝《ね》かして一|晩《ばん》扇《あふ》いで居《ゐ》て其《それ》で功徳《くどく》のためにする家《うち》があると承《うけたまは》りましても、全《まツた》くの処《ところ》一|足《あし》も歩行《ある》けますのではございません、何処《どこ》の物置《ものおき》でも馬小屋《うまごや》の隅《すみ》でも宜《よ》いのでございますから後生《ごしやう》でございます。)と前刻《さツき》馬《うま》の嘶《いなゝ》いたのは此家《こゝ》より外《ほか》にはないと思《おも》つたから言《
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