んで懐《ふところ》に入《い》れて、うむと此《こ》の乳《ちゝ》の下《した》へ念仏《ねんぶつ》を唱《とな》へ込《こ》んで立直《たちなほ》つたは可《よ》いが、息《いき》も引《ひ》かぬ内《うち》に情無《なさけな》い長虫《ながむし》が路《みち》を切《き》つた。
其処《そこ》でもう所詮《しよせん》叶《かな》はぬと思《おも》つたなり、これは此《こ》の山《やま》の霊《れい》であらうと考《かんが》へて、杖《つえ》を棄《す》てゝ膝《ひざ》を曲《ま》げ、じり/\する地《つち》に両手《りやうて》をついて、
(誠《まこと》に済《す》みませぬがお通《とほ》しなすつて下《くだ》さりまし、成《なる》たけお昼寝《ひるね》の邪魔《じやま》になりませぬやうに密《そツ》と通行《つうかう》いたしまする。
御覧《ごらん》の通《とほ》り杖《つえ》も棄《す》てました。)と我折《がを》れ染々《しみ/″\》と頼《たの》んで額《ひたひ》を上《あ》げるとざつといふ凄《すさまじ》い音《おと》で。
心持《こゝろもち》余程《よほど》の大蛇《だいじや》と思《おも》つた、三|尺《じやく》、四|尺《しやく》、五|尺《しやく》、四|方《はう》、一|
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