のなんぞ足許《あしもと》にごろ/″\して居《ゐ》る茂《しげ》り塩梅《あんばい》。
 又《また》二|里《り》ばかり大蛇《おろち》の畝《うね》るやうな坂《さか》を、山懐《やまふところ》に突当《つきあた》つて岩角《いはかど》を曲《まが》つて、木《き》の根《ね》を繞《めぐ》つて参《まゐ》つたが此処《こゝ》のことで余《あま》りの道《みち》ぢやつたから、参謀本部《さんぼうほんぶ》の絵図面《ゑづめん》を開《ひら》いて見《み》ました。
 何《なに》矢張《やツぱり》道《みち》は同一《おんなじ》で聞《き》いたにも見《み》たのにも変《かはり》はない、旧道《きうだう》は此方《こちら》に相違《さうゐ》はないから心遣《こゝろや》りにも何《なん》にもならず、固《もと》より歴《れツき》とした図面《づめん》といふて、描《ゑが》いてある道《みち》は唯《たゞ》栗《くり》の毯《いが》の上《うへ》へ赤《あか》い筋《すぢ》が引張《ひつぱ》つてあるばかり。
 難儀《なんぎ》さも、蛇《へび》も、毛虫《けむし》も、鳥《とり》の卵《たまご》も、草《くさ》いきれも、記《しる》してある筈《はず》はないのぢやから、薩張《さツぱり》と畳《たゝ》
前へ 次へ
全147ページ中35ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング