額《ひたひ》に手《て》を。
第七
「果《はてし》が無《な》いから肝《きも》を据《す》ゑた、固《もと》より引返《ひきかへ》す分《ぶん》ではない。旧《もと》の処《ところ》には矢張《やツぱり》丈足《たけた》らずの骸《むくろ》がある、遠《とほ》くへ避《さ》けて草《くさ》の中《なか》へ駆《か》け抜《ぬ》けたが、今《いま》にもあとの半分《はんぶん》が絡《まと》ひつきさうで耐《たま》らぬから気臆《きおくれ》がして足《あし》が筋張《すぢば》ると、石《いし》に躓《つまづ》いて転《ころ》んだ、其時《そのとき》膝節《ひざふし》を痛《いた》めましたものと見《み》える。
それからがく/″\して歩行《ある》くのが少《すこ》し難渋《なんじふ》になつたけれども、此処《こゝ》で倒《たふ》れては温気《うんき》で蒸殺《むしころ》されるばかりぢやと、我身《わがみ》で我身《わがみ》を激《はげ》まして首筋《くびすぢ》を取《と》つて引立《ひきた》てるやうにして峠《たうげ》の方《はう》へ。
何《なに》しろ路傍《みちばた》の草《くさ》いきれが可恐《おそろ》しい、大鳥《おほとり》の卵《たまご》見《み》たやうなも
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