向《むか》ふで鎌首《かまくび》を上《あ》げたと思《おも》ふと草《くさ》をさら/\と渡《わた》つた。
 漸《やうや》う起上《おきあが》つて道《みち》の五六|町《ちやう》も行《ゆ》くと又《また》同一《おなじ》やうに、胴中《どうなか》を乾《かは》かして尾《を》も首《くび》も見《み》えぬが、ぬたり!
 あツといふて飛退《とびの》いたが、其《それ》も隠《かく》れた。三|度目《どめ》に出会《であ》つたのが、いや急《きふ》には動《うご》かず、然《しか》も胴体《どうたい》の太《ふと》さ、譬《たと》ひ這出《はひだ》した処《ところ》でぬら/\と遣《や》られては凡《およ》そ五|分間《ふんかん》位《ぐらゐ》は尾《を》を出《だ》すまでに間《ま》があらうと思《おも》ふ長虫《ながむし》と見《み》えたので已《や》むことを得《え》ず私《わし》は跨《また》ぎ越《こ》した、途端《とたん》に下腹《したはら》が突張《つツぱ》つてぞツと身《み》の毛《け》、毛穴《けあな》が不残《のこらず》鱗《うろこ》に変《かは》つて、顔《かほ》の色《いろ》も其《そ》の蛇《へび》のやうになつたらうと目《め》を塞《ふさ》いだ位《くらゐ》。
 絞《しぼ
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