はない、一|生懸命《しやうけんめい》、景色《けしき》も奇跡《きせき》もあるものかい、お天気《てんき》さへ晴《は》れたか曇《くも》つたか訳《わけ》が解《わか》らず、目《ま》まじろぎもしないですた/\と捏《こ》ねて上《のぼ》る。
 とお前様《まへさま》お聞《き》かせ申《まを》す話《はなし》は、これからぢやが、最初《さいしよ》に申《まを》す通《とほ》り路《みち》がいかにも悪《わる》い、宛然《まるで》人《ひと》が通《かよ》ひさうでない上《うへ》に、恐《おそろし》いのは、蛇《へび》で。両方《りやうはう》の叢《くさむら》に尾《を》と頭《あたま》とを突込《つツこ》んで、のたりと橋《はし》を渡《わた》して居《ゐ》るではあるまいか。
 私《わし》は真先《まツさき》に出会《でツくわ》した時《とき》は笠《かさ》を被《かぶ》つて竹杖《たけづゑ》を突《つ》いたまゝはツと息《いき》を引《ひ》いて膝《ひざ》を折《を》つて坐《すわ》つたて。
 いやもう生得《しやうとく》大嫌《だいきらひ》、嫌《きらひ》といふより恐怖《こわ》いのでな。
 其時《そのとき》は先《ま》づ人助《ひとたす》けにずる/″\と尾《を》を引《ひ》いて
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