とほ》くの方《はう》から歩行《ある》いて来《き》たのではないやう、猿《さる》も、蟇《ひき》も居《ゐ》る処《ところ》と、気休《きやす》めに先《ま》づ考《かんが》へたが、なかなか何《ど》うして。
 暫《しばら》くすると今《いま》其奴《そやつ》が正面《しやうめん》の戸《と》に近《ちかづ》いたなと思《おも》つたのが、羊《ひつじ》の啼声《なきごゑ》になる。
 私《わし》は其《そ》の方《はう》を枕《まくら》にして居《ゐ》たのぢやから、つまり枕元《まくらもと》の戸外《おもて》ぢやな。暫《しばら》くすると、右手《めて》の彼《か》の紫陽花《あぢさい》が咲《さ》いて居《ゐ》た其《そ》の花《はな》の下《した》あたりで、鳥《とり》の羽《は》ばたきする音《おと》。
 むさゝびか知《し》らぬがきツ/\といつて屋《や》の棟《むね》へ、軈《やが》て凡《およ》そ小山《こやま》ほどあらうと気取《けど》られるのが胸《むね》を圧《お》すほどに近《ちかづ》いて来《き》て、牛《うし》が啼《な》いた。遠《とほ》く彼方《かなた》からひた/\と小刻《こきざみ》に駈《か》けて来《く》るのは、二|本足《ほんあし》に草鞋《わらぢ》を穿《は》
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