いた獣《けもの》と思《おも》はれた、いやさまざまにむら/\と家《いへ》のぐるりを取巻《とりま》いたやうで、二十三十のものゝ鼻息《はないき》、羽音《はおと》、中《なか》には囁《さゝや》いて居《ゐ》るのがある。恰《あたか》も何《なに》よ、それ畜生道《ちくしやうだう》の地獄《ぢごく》の絵《ゑ》を、月夜《つきよ》に映《うつ》したやうな怪《あやし》の姿《すがた》が板戸《いたど》一|重《へ》、魑魅魍魎《ちみまうりやう》といふのであらうか、ざわ/\と木《こ》の葉《は》が戦《そよ》ぐ気色《けしき》だつた。
息《いき》を凝《こら》すと、納戸《なんど》で、
(うむ、)といつて長《なが》く呼吸《いき》を引《ひ》いて一|声《こゑ》、魘《うなさ》れたのは婦人《をんな》ぢや。
(今夜《こんや》はお客様《きやくさま》があるよ。)と叫《さけ》んだ。
(お客様《きやくさま》があるぢやないか。)
と暫《しばら》く経《た》つて二|度目《どめ》のは判然《はつきり》と清《すゞ》しい声《こゑ》。
極《きは》めて低声《こゞゑ》で、
(お客様《きやくさま》があるよ。)といつて寝返《ねがへ》る音《おと》がした、更《さら》に寝返《ね
前へ
次へ
全147ページ中116ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング