気《き》になつて、はじめの内《うち》私《わし》を寝《ね》かさなかつた事《こと》もあるし、目《め》は冴《さ》えて、まじ/\して居《ゐ》たが、有繋《さすが》に、疲《つかれ》が酷《ひど》いから、心《しん》は少《すこ》し茫乎《ぼんやり》して来《き》た、何《なに》しろ夜《よ》の白《しら》むのが待遠《まちどほ》でならぬ。
 其処《そこ》ではじめの内《うち》は我《われ》ともなく鐘《かね》の音《ね》の聞《きこ》えるのを心頼《こゝろたの》みにして、今《いま》鳴《な》るか、もう鳴《な》るか、はて時刻《じこく》はたつぷり経《た》つたものをと、怪《あや》しんだが、やがて気《き》が着《つ》いて、恁云《かうい》ふ処《ところ》ぢや山寺《やまでら》処《どころ》ではないと思《おも》ふと、俄《にはか》に心細《こゝろぼそ》くなつた。
 其時《そのとき》は早《は》や、夜《よる》がものに譬《たと》へると谷《たに》の底《そこ》ぢや、白痴《ばか》がだらしのない寝息《ねいき》も聞《きこ》えなくなると、忽《たちま》ち戸《と》の外《そと》にものゝ気勢《けはひ》がして来《き》た。
 獣《けもの》の足音《あしおと》のやうで、然《さ》まで遠《
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