(貴僧《あなた》、申《まを》せば何《なん》でも出来《でき》ませうと思《おも》ひますけれども、此人《このひと》の病《やまひ》ばかりはお医者《いしや》の手《て》でも那《あ》の水《みづ》でも復《なほ》りませなんだ、両足《りやうあし》が立《た》ちませんのでございますから、何《なに》を覚《おぼ》えさしましても役《やく》には立《た》ちません。其《それ》に御覧《ごらん》なさいまし、お辞義《じぎ》一《ひと》ツいたしますさい、あの通《とほり》大儀《たいぎ》らしい。
 ものを教《おし》へますと覚《おぼ》えますのに嘸《さぞ》骨《ほね》が折《を》れて切《せつ》なうござんせう、体《からだ》を苦《くる》しませるだけだと存《ぞん》じて何《なんに》も為《さ》せないで置《お》きますから、段々《だん/″\》、手《て》を動《うご》かす働《はたらき》も、ものをいふことも忘《わす》れました。其《それ》でも那《あ》の、謡《うた》が唄《うた》へますわ。二ツ三ツ今《いま》でも知《し》つて居《を》りますよ。さあ御客様《おきやくさま》に一ツお聞《き》かせなさいましなね。)
 白痴《ばか》は婦人《をんな》を見《み》て、又《また》私《わ
前へ 次へ
全147ページ中107ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
泉 鏡太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング