じぎ》をすることだけは知《し》つてゞございますが、未《ま》だ御挨拶《ごあいさつ》をいたしませんね。此頃《このごろ》は体《からだ》がだるいと見《み》えてお惰《なま》けさんになんなすつたよ、否《いゝえ》、宛《まる》で愚《おろか》なのではございません、何《なん》でもちやんと心得《こゝろえ》て居《を》ります。
 さあ、御坊様《ごぼうさま》に御挨拶《ごあいさつ》をなすつて下《くだ》さい、まあ、お辞義《じき》をお忘《わす》れかい。)と親《した》しげに身《み》を寄《よ》せて、顔《かほ》を差覗《さしのぞ》いて、いそ/\していふと、白痴《ばか》はふら/\と両手《りやうて》をついて、ぜんまいが切《き》れたやうにがつくり一|礼《れい》。
(はい、)といつて私《わし》も何《なに》か胸《むね》が迫《せま》つて頭《つむり》を下《さ》げた。
 其《その》まゝ其《そ》の俯向《うつむ》いた拍子《ひやうし》に筋《すぢ》が抜《ぬ》けたらしい、横《よこ》に流《なが》れやうとするのを、婦人《をんな》は優《やさ》しう扶《たす》け起《おこ》して、
(おゝ、よく為《し》たのねえ、)
 天晴《あツぱれ》といひたさうな顔色《かほつき》で
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