られる事柄であって、むしろ日本の家庭の進歩したために生ずる行き違いであると考えたいので御座います。しかし我国の今日の有様ではまだ容易に陸軍軍医正たる藤井氏の趣味が其処《そこ》まで進んでいるとは想像致しかねます。これは新聞記者たる方方のもっと深い観察を煩さねばなりません。

 離婚という事を一概に罪悪のように考える人のあるのはどうでしょうか。離婚をして双方幸福の生涯に入った人も少《すくな》くないと存じます。そういう場合には社会はその人たちの離婚を賀しても宜《よろ》しいでしょう。また夫婦という者はあながち幸福ばかりを打算して一緒になっておられるものでなく、そういう打算や道徳や義理や、聖人の教や、乃至《ないし》神様の語《ことば》などを十分知り抜いてしかもそれを超越した処に、どうしても双方の気分が喰違《くいちが》って面白くないという場合もあるのですから、其処に至っては合議の上で離婚するのが正当の処置であろうと存じます。

 私は気の毒に感じます事は、教育界の諸先生がこういう事件に出会《であわ》れる度《たび》に、心にもない世間|受《うけ》の好《い》い事をいわれたり、また正直に自分の不明を告白せら
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