の教育家の倫理の御本尊になっておられます。かような手続の前後《あとさき》にまで目角《めかど》を立てられる教育家の不心得の方がよほど怪《け》しからん事かと存じます。枝葉の事を弥聒《やかま》しくいわれるよりは、忌《いま》わしい離婚沙汰などを出《いだ》さぬように今の教育を根本から改めて、自《おのずか》ら夫婦相和して行かれる完全な人格を作る事を心掛け、教育家自身の迂濶と怠慢とを鞭撻《べんたつ》せらるるように希望致します。
 
 今の家庭や学校教育が頼みにならぬとすれば、若い女子自身が各々自分の「娘」時代を尊重して我手で立派な人格を修養せられる事が何より大切な急務だと思います。浅薄《あさはか》な表面《うわべ》の装飾や衒《てら》いでなく、全人格を挙げて立派に装飾し、それを女子の誇とするように力《つと》めねばなりません。美しい衣服を著るにも、読書をするにも、文学や美術を嗜《たしな》むにも、常に立派な娘に成る、完全な人間に成るという心掛が必要です。かような自尊自負の心ある女子が軽軽しく他の誘惑に陥る訳もなく、離婚沙汰を惹起《ひきおこ》すような結婚を致す訳もなく、社交や処世において不都合を仕出かす訳もな
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