に文化生活の創造を妨害するものさえあります。今後の生活が個人各自の自覚の上に立つ生活であらねばならぬというのは、この点に自覚することをいうのだと思います。

       *

 私は少しく具体的に述べてそれらの先輩婦人たちに抗議します。指導者側のそれらの婦人たちの中の或人たちが、経済的労働を私たち婦人に奨励されるのを見ると、その目的が利殖の外に出でず、その方法が振売《ふりうり》商人の暴利を狙《ねら》う不正手段と大差のないものであるのに呆《あき》れます。例えば二円の資本で水菓子を工場の労働者に売って、一時間ほどの中に一円の純益を挙げるというような事を、得意になって私たちに教えられるのです。それは文化主義の理想と相容れない経済上の専制思想――即ち資本主義の思想であることに、その指導者が全く自覚を欠いておられることだと思います。
 また或人たちが各種にわたる家庭の内職を紹介して婦人や小児に奨励されるのを見ると、その労銀の余りに低いことや、その仕事の余りに人間を過労させることや、殊に幼年期の子女までを昼夜にわたって時間の制限もなく座職の中に虐使することやについて、経済的、倫理的、人道的の顧慮
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