を創造し増加することに由って、リップスのいわゆる「絶対的な道徳的、社会的、全人類的有機体即ち世界国の完成」に資することが即ち文化価値であり、この文化価値を実現する過程を文化生活といい、人間の思想と行為との一切|帰趨《きすう》を文化価値に置くことを文化主義というのだと思います。
 人間は文化価値実現の生活に参加して、初めて完全に自然人の域を脱した人格者ということが出来ます。文化主義が最高唯一の生活理想であることは、文化内容のいずれを採って調べて見ても、その帰趨を文化主義に置かない限り徹底した解釈が附かないので解ると思います。例えば芸術のための芸術とか、良妻賢母のための良妻賢母とかでは、それの絶対価値を定めることが出来ません。芸術至上主義や母性中心主義が中途半端なものであって、到底文化生活の全体を一貫した理想の標語となりがたいのはこれがためです。芸術も、母の行為も、学問も、政治も、あらゆる人間の活動がすべて文化主義を理想として、初めて文化生活の上に意義と価値とを持つことが出来ると思います。

 次に私は「男女平等主義」と「人類無階級的連帯責任主義」とを、改造の基礎条件の第三、第四とする者で
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