、一は静かに内省し黙想する所がないために充実し精練された言語で簡明に述べるだけの何らの深奥な思想や的確な意見を持っていないからで、要するに原因は無智にあります。また女が感情に偏するといわれ、気分に左右されるといわれるほど僅《わずか》の事にも喜怒哀楽の変化が著しく、男をして女子と小人は養いがたしとまで歎ぜしめたのも感情を調整するに必要な智力を欠いているからです。また女が専ら愛情の世界に住もうとするのも無智の弱点を無意識に掩蔽《えんぺい》しようとするからであって、女が特に男子よりも愛の深い先天性を備えているという訳ではなさそうです。その愛というのも智力に介添《かいぞえ》されない盲目の愛ですから大抵利己主義的の愛に停まっています。ワイニンゲルが「女は我子に対しては母であるが、他人の子に対しては全く継母である」という意味の事をいっている通り、自分に親しい恋人や子に対しては絶対服従をも厭《いと》わぬ位に犠牲的な愛情を捧《ささ》げながら、自分に叛《そむ》いて少しでも厚意を持たない者に対しては忽《たちま》ち冷酷な態度を以て対し、愛する者の言うことは一も二もなく盲従しながら、反対な者の言行は悉《ことご
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