動になってしまいます。

   婦人と智力

 野蛮時代には人間の強弱を主として腕力で測りました。また腕力の変形である武力で測りました。けれど今では強弱の意味が精神的のものに移り、主として智力の多少が人類を強くも弱くもすることになりました。腕力や武力を以て優越の地位を占めようとすることは野蛮の遺風であり、それが今日にもなお役立つことのあるのは文明の矛盾だとせられております。この度の大戦争などはどう考えても一時の変調であって、将来の生活に対しては時代遅れの武断主義者を除く外|何人《なんぴと》も武力を拒否する予感を持っていない者はありません。またやむをえず維持されている現今の武力もその裏面には智力が支配していて、単独に役立つ武力というものはなくなっております。それですから今後の強弱は男も女も智力の多少が最大要素です。
 女の無智は今更のことでなく、昔からそれがために女自身も苦痛と侮蔑を受け、男も多大の迷惑を被《こうむ》っています。女が饒舌《じょうぜつ》だというのも、一は物事を正視してその大体と中枢とを掴《つか》むことが出来ず、枝葉に走って筋の通らぬ感情的な発言をくだくだしく並べるからであり
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