婦人に関する或特殊の必要な書物の外はなるたけ男の読物を読む習慣を附けて、現代人として知るべきことを男と対等に知識しようと努力せねばなりません。女の間に歓迎される種種の婦人雑誌などはいずれも女の感情に媚《こ》びて編輯された甘たるい分子が多く、男の世界では既に常識になっているほどの科学的及び社会的知識すら供給しない物です。私どもは最早娯楽のために物を読むような呑気《のんき》な生活をしていられないのですから、出来るだけ自分の力以上の読物を研究的に読もうと心掛けねばなりません。
今日では教育があるといわれる若い婦人さえ若い男子の読む十分の一の読書をもしない有様です。近頃の新聞や男子の読む雑誌にはかなり有益な学説が掲載され、また現代人として真面目《まじめ》に考えて見ねばならぬ個人及び社会の問題がいくつも記載されているのですけれど、婦人はそういう太切な点に目を着けず、唯《た》だ自分に解りやすい感情的凡俗的の記事ばかりを愛読しております。それですから男子の前で話が少しでも智力を要する問題に及ぶと厚顔《あつか》ましく支離滅裂な冗弁を並べるか、謙遜して口を噤《つぐ》んでしまうかの外ありません。偶《たま
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