国民全体という中に私たち婦人の存在を無視しています。民主主義は男子ばかりの生活に適用されるものと限りません。文化生活に対する平等の権利は婦人にも分配されるべきものだと思います。否、それは婦人においても男子と同じく固より享得している権利です。唯だ私たちはその権利の回復を要求すれば好いのだと思います。
 民主主義の世界には男尊女卑主義の道徳は許されません。国民としての存在に男子と婦人との優劣を認める時代は過ぎ去りました。国家に奉仕する義務の負担者として、愛国者として、創造能力を保有する個人として、婦人の分担する所は男子と全く平等の位地にあります。
 普通選挙といえば、当然そのうちに男女の参政権が含まれているものと私は考えたいのです。この権利の要求から婦人を除外することは、婦人を非国民扱いにし、低能扱いにするものだと思います。決して徹底した普通選挙とはいわれません。もし男子のみに限られた普通選挙が実施されるとすれば、選挙有権者は――二十五歳以上の男子として――千二百八十三万九千六十二人を数え、現在の有権者数に比べると非常に増加するに違いありませんが、これに二十五歳以上の婦人を加えることが出来
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