ったり台所の用事にかまけたりして貴重なる一生を空費するような事がなくなり、初めて文明男子の伴侶《はんりょ》として対等なる文明婦人の資格を作ることが出来ようと思う。そうして男子より軽侮せらるる事なく互に尊敬し合う位地に上ったならば、諸種の婦人問題は自然に解決が附くであろうと思う。

 男子側の保守主義者は英国婦人の参政権問題の運動を伝聞して婦人の覚醒を怖《おそ》れるようであるが、我国の婦人にはまだ容易にそういう突飛な運動は起らないであろう。なぜならば我国の青年には男子にさえ政治熱は皆無なのであるから、凡《すべ》ての学芸すべての社会問題に冷淡なる日本の女子が一躍そういう極端な新運動を試みようとは想われない。またそういう女壮士の殺風景な政治運動は故|中島俊子《なかじまとしこ》女史の娘時代や近年の故|奥村五百子刀自《おくむらいおことじ》の実例に見て、さまでなつかしい性質のものでないことは明瞭《めいりょう》であるから、今後幾年かの後に我国の婦人が覚醒するとしても、政治には向わないで、学問、芸術、教育などの方面に向って男子と競争の態度を取るであろうと想われる。殊《こと》に文学において日本婦人は侮《
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