母性偏重を排す
与謝野晶子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)哺育《ほいく》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)去年|独逸《ドイツ》軍のために

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「より」に傍点]
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 トルストイ翁に従えば、女は自身の上に必然に置かれている使命、即ち労働に適した子供を出来るだけ沢山生んでこれを哺育《ほいく》しかつ教育することの天賦の使命に自己を捧《ささ》げねばならぬと教えられ、またエレン・ケイ女史に従っても女の生活の中心要素は母となることであると説かれる。そうしてトルストイ翁では男の労働に対してする余力ある女の助力が非常に貴いものであるとして許容せられるに反し、ケイ女史では女が男と共にする労働を女自身の天賦の制限を越えた権利の濫用だとして排斥せられる相異がある。またトルストイ翁では男女の生活の形式は異っていても一般の天賦においては全く平等であると見られるのに反し、ケイ女史では自然が不平等に作った男女の生活を人間が平等にしようとするのは放縦《ほうしょう》であると見られる相異がある
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