度にはこの非難を下し得る遺憾が明かにあります。
平塚さんは、私が『婦人公論』に載せた、あの一篇の短い感想だけを読んで、私という個人全体の欠点を非難されました。これが「事実その物の観察」に出発して「事物の広くして深い関係」を考え、一つの事件を、「単独孤立的」に取扱わず、慎重な観察を以て「社会の事実を無視」しない人の為すべきことでしょうか。私は今|憚《はばか》らずにいう必要を感じます。この七、八年間の私が乏しい時間の中で最も親んでいる所の、かつ出来るだけ広く読もうと心掛けている所のものは、文学の書物よりも、むしろ政治、経済、教育、労働問題等のそれであることや、それと同時に私が男女のあらゆる職業に対して実際にどれだけ注意し、踏査し、かつ他人の経験に聞きつつあることやは、私の日常の実際行為として平塚さんの耳目に触れないのは当然ですが、平生文筆に由って私の公開しているものについて、もし平塚さんが通読の煩を厭《いと》われなかったなら、たとい結果は一知半解の独断的意見が多くなっているにもせよ、私の取扱っている題目の範囲のかなりに広い上に、私の態度が私の微力の能う限りにおいて社会事実の有機的関係を広
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