れらを全く顧慮しないで「我国の如く婦人の労働範囲の狭い、その上、終日駄馬の如く働いても、自分ひとり食べて行くだけの費用しか得られないような、婦人の賃銀や給料の安い国」や「生涯を通じて働いてもなお老後の生活の安全が保証されない、またはそれだけの貯蓄を為《な》し得るほどの賃銀が得られないような経済状態にある現社会」が何時《いつ》までも人間の力で改造されずに固定して存続する物のように平塚さんの考えておられるのが何よりの誤解だと思います。恋愛の自由を主張される時にはエレン・ケイ女史と同じような立場から、自由思想家として理想主義的な議論をされる平塚さんが、私たちのいう意味の婦人の経済的独立に反対される時には、どうしてこうまで運命論的、自然主義的な行詰った消極論を述べられるのでしょうか。
 また平塚さんは、私が現代の理想として、こうした婦人の経済的独立を尊重しかつ要求するなら、それに先だって「婦人の職業教育奨励、職業範囲の拡張、賃銀値上問題等」になぜ大に努力しないかという風にいわれましたが、これなどは私の素養と、境遇と、精力とに対して甚だ思い遣《や》りのない、いわゆる「難《かた》きを人に強《し》う
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