る者だと思います。男女相互の経済上の独立を顧慮しない恋愛結婚は不備な結婚であって、今後の結婚の理想とすることが出来ません」と述べ、従って、妊娠分娩等の時期にある婦人が国家に向って経済上の特殊な保護を要求しようという欧米の女権論者の主張が私たちの理想と背馳《はいち》することを思って、「既に生殖的奉仕に由って婦人が男子に寄食することを奴隷道徳であるとする私たちは、同一の理由から国家に寄食することをも辞さなければなりません」と述べたのがお気に入らなかったのです。
これに対して、平塚さんは「母は生命の源泉であって、婦人は母たることに由って個人的存在の域を脱して、社会的な、国家的な存在者となるのでありますから、母を保護することは婦人一個の幸福のために必要なばかりでなく、その子供を通じて、全社会の幸福のため、全人類の将来のために必要なことなのであります」という理由から、「母体に妊娠、分娩、育児期における生活の安定を与えるよう、国庫に由って補助すること」を主張されております。これに由って見ると、平塚さんは母性を過大に尊重しておられることが解ります。私は人間生活の高度な価値を父たり母たることに偏倚《
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