が稀薄である。……何に拠りて生きるか。生活の基礎をどの[#「どの」に傍点]方面に置くか。真に生きているような心を以て朝を迎えるにはどうしなければならぬか。これらは男女両性に共通の問題であるが、解放されたる今日の女性、いわゆる醒《さ》めたる女性に取りては、それが一層痛切に感じられなければならぬはずだ。……そこで生の悦びを味うことから転じて、生活の基礎を精神的に、また経済的に確実にする思索に入らねばならぬ」という数節を引用して置きます。なおこれについては一条忠衛氏の「男女道徳論」にも詳しい主張があり、米田庄太郎氏の「現代の結婚」という論文や、山脇玄《やまわきげん》博士のいくつかの論文にも適切な解説があります。
私は今更唯物主義に由って経済一元論などを唱えるのでなく、以上のような相対的の意味で経済的独立を主張しているのです。山田さんがこれを誤解して、人間の絶対の独立を経済的手段に由って私が企画しているかの如く攻撃せられたのは、的なきに矢を放たれたものかと思います。
その上、山田さんは、人間が果して精神的にも経済的にも独立することの出来るものであろうかといって、経済的独立の思想及び行為を冷
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