たら》す物体を総称してこれを富といわんと欲す。……人間の体及び心の健全なる発達を助長し、依《よ》って以て、直接間接に人間をば道徳的に向上せしむるの作用を為す者は、凡てこれを富という。この意味の富の充実を計るもの」(河上博士)である以上、女子に限らず、経済的独立が何人にも必要であることは天日《てんじつ》を指すのと等しく明かな事実です。
なぜにこれを特に女子に向って高調する必要があるかということは、既に私においては、この八、九年間に度々繰返して述べている所ですから、今は自説を述べる代りに、今春|長谷川天渓《はせがわてんけい》さんが同じ問題について述べられた一文の中から「自己と現実の世界が何らかの関係を保つようになれば、そこに経済問題が生じて来る。私は現在の婦人界がこの方面を閑却してはいないかと思う。経済上の独立ということは詰らぬ問題のようであるが、現実の世界が経済的に組織されてある間は、これを重要視しなければならぬ。今の婦人界の大部分は自己の解放を欲しつつあるか、あるいは解放の喜悦を味いつつあるか、このいずれかであって、まだ経済上の問題に及ぶこと
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