の与えられた紙数に制限があります。私は出来るだけ簡略にして言いたいだけの事をこの制限の中に書き並べて行こうと思います。
 私が女子の経済的独立を主張しているのは、古《いにしえ》の希臘《ギリシャ》の哲人が「人は理想的に生活する前に先ず現実的に生活することを要す」といい、現代|伊太利《イタリヤ》の哲学者クロオツェが「道徳性は具体なるものの中に生き、功利に生きている……従って経済的形式と道徳的形式とは全く分離的にこれを区別することは宜しくない」といった意味で主張しているのです。経済が「社会を構成する凡《すべ》ての階級にその精神上の発達の物質的基礎を充実せしむるを以て最重の職分とするもの」(福田博士)であり、「人間に、他のより[#「より」に傍点]高き発達、より[#「より」に傍点]貴き活動を得せしめんがために必要なる物質的基礎を均等に与えているや否やを意味するもの」(マアシャル氏)であり、「経済とは、つまり物質的外界に向けられたる人間の行為にして、人間の欲望の充足に応ずる物質的条件を作ることを目的とするものの総体」(米田庄太郎《よねだしょうたろう》氏)であり、「余は人間に向って外部より福を齎《も
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