いわゆる「道、これを生じ、これを畜《やしな》い、これを長じ、これを育て、これを成し、これを熟し、これを養い、これを覆い、生んで有せず、為して憎まず」という大道的な境地にまで生きたいと考えています。私は最上の愛国者です。それ故に、特に国家とか社会とかいう中間の人生観や倫理観に停滞していたくありません。最上の立場から国家をも社会をも愛したいのです。
平塚さんは母が国家のお役に立つという意味から、国家の母性保護を至当とされています。私はそういう意味からでなく、食糧に窮する貧困者に施米または廉米を供給するのと同じ意味から、母の職能を尽し得ない貧困者を国家が保護するのは国家の義務だと考えて全く賛成するのですが、精神的にも経済的にも、自労、自活、自立、自衛する可能性を持っている個人が、父にせよ、母にせよ、妻にせよ、国家の保護に由って受動的隷属的な生き方をするのは、個人の威厳と自由と能力とを放棄する意味において反対するのです。
「保護」という官僚式な言葉には救済的恩恵的の意味があります。現に我国の救済調査会の項目には、白痴低能児の保護、不良少年の保護、細民部落の保護と並んで婦人労働者の保護が掲げ
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